施工中にブログで書かせていただいた「海が見える縁側の家」が NPO法人 日本民家再生協会の「民家再生奨励賞」を受賞しました。建物名は「築大正十五年 縁側のある平屋」です。
日本民家再生協会(JMRA)は東京に本部を置く全国組織で、1997年に設立され、日本の民家を次代へ引き継ぐことを理念として掲げ、活動している団体です。弊社はJMRAの登録事業者です。
「民家再生奨励賞」は登録事業者の実績を継承し、広く社会に公表することにより、民家の保存・再生をよりいっそう広めることを目的に制定されたものです。
11月中旬にJMRAの民家フォーラムが開催され、そのシンポジウムの中で表彰されました。
会場は「甲州市 勝沼ぶどうの丘」。当日は秋晴れ。ぶどう畑を眺めながら駅から歩いて会場に向かいました。
シンポジウムには建築主のご夫婦も参加され、表彰状とプレートを受け取られました。
ところで、奨励賞の応募の際に建築主から所感を寄せていただきました。
心にじんわりしみてくる素敵な所感です。
JAMRAのホームページに要約がありますが、このブログでは全文を掲載いたします。
家への愛がつまっています。
建築主再生後の所感
この家に引っ越して1年と少し経ちました。
大豪邸でも文化財でもありません。大正時代に建てられた「ふつう」の家です。「ふつう」だからこそ、ほおっておくと、気付かないうちにひっそりと町から姿を消してしまうような家です。
昔の「ふつう」が急速に失われつつある令和の時代に、この家は、築当時の姿になるべく近づける形で蘇らせていただきました。
「ふつう」の家ですから、ぱっと目をひく派手さはあまりありません。
それでも、日々の細部に、しみじみとした趣きと落ち着きがある、そんな家です。
たとえば、縁側に落ちる木漏れ日を眺めながらの、午後のお茶。
ふすまを開け放った部屋に通り抜ける風を感じながらの午睡。
一日を「あらすじ」にまとめたら、こぼれおちてしまうような一瞬一瞬が、この家ではとても濃やかに、愛おしく感じられます。
間取りもほぼ築当時のままですから、最近の家のように「LDK」や「寝室」といった名のつく空間はありません。
遊びに来た友人からは「ここは何の部屋?」「ここでは何をするの?」とよく聞かれますが、私たちはいつも「何にでも使える、何でもできる部屋」と返しています。空間を特定の用途に限定せず、その時々の状況に応じて建具やお膳などを用いて自由な発想で使える日本伝統の間取りは、生活様式の多様化した現代にこそフィットするのではないかと考えています。
再生にあたってお世話になった亀屋工務店さんには、終始わがままばかり申しまして大変ご迷惑をおかけしたかと恐縮ですが、家にも施主にも真摯に向き合って丁寧な仕事をしていただき、深く感謝しております。
たくさんの思いがこもった家ですから、これからも永く住み継いでいきたいと思っております。
建築主自筆の所感
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表彰状
プレート