築86年 木と土の家 修復工事
貫(ぬき)と楔(くさび)
ブログの更新が大変遅くなりました!
前回の柱に続いて、今回は貫と楔です。
伝統工法では柱に貫(ぬき)を通します。日本の古くからの家の建て方です。
貫(ぬき)
写真は柱の穴に貫を通しているところ。貫材(ぬきざい)は杉です。
楔(くさび)
よく見ると柱の穴に隙間があります。
ここに木の楔(くさび)を打ち込んで貫(ぬき)を固定します。
楔(くさび)
楔で貫が固定しました。
ひとつひとつ打ち込んで・・・
一番下は貫の下に打ち込みます。
よし!楔の打ち込み、完了!
木を木で固定する伝統工法
柱や梁などの骨組みとなる部分を構造と言いますが、伝統工法では、構造部分に基本的には金属を使いません。
木と金属は伸縮率が違います。
乾燥して落ち着いた木は気温の変化による伸縮はありませんが、金属は気温の変化で伸縮します。
そのため、一緒に使うと相性が良いとは言えません。長い年月のうちに接合部分が緩んできます。
一方、木と木はきちんと造れば、緩みません。
木組みの家が長持ちする大きな要因の一つです。
また木は柔らかく、金属は固いため、金属が木を傷めます。
近年、木と木をボルトなどの金物で固定するようになりました。ボルトを通すために穴をあけて木を傷め、さらに補強金物を固定するために釘を沢山打つ。木は悲鳴をあげています。そこに力が加わった時、木が裂けなければ強度は保たれますが、木が裂けると、強度は全くなくなります。
伝統工法でも和釘という釘を使いますが、木に負担はかかりません。釘を打ち込む前に、木を傷めないよう時間をかけて釘道(くぎみち)を造り、そこに釘を打ち込みます。木は悲鳴を上げることなく、強度を保つことができます。
和釘(わくぎ) 頭巻釘1寸5分
和釘(わくぎ)替折釘4寸
釘道(くぎみち)
釘道に和釘を入れ
打ち込みます
-地震に強い伝統工法(土壁と貫)-
今、土壁が優れた工法として見直されています。
これまで「0.5倍」とされていた土壁の壁倍率が、平成15年 建築基準法施行令第46条により、1100号第1-5に定められた仕様の施工であれば「1.5倍」にまでみることが出来るようになりました。
壁倍率というのは、揺れに対する壁の強度のことです。つまりこの法令の改正によって土壁に強度があることが認められたということです。従来は筋違いの使用が義務付けられていましたが、平成15年の建築基準法の改正により、貫を使用した土壁だけで家を造れるようになりました。
貫は大きな変形性能を持っていて、土壁と併用することで、大きな水平体力を持ち、強度を保ちます。土壁は動くことで揺れのエネルギーを吸収する柔構造です。大きな揺れによって、家は揺れ、土壁も崩れたりしますが、倒壊は免れることが多く、修復・継続使用が可能です。
これに対して筋違いは、剛構造です。柱間に斜めに取付け、つっぱって動かないことで、揺れに抵抗します。大きな揺れによって、割れたりして損壊し、修復・継続使用が難しくなります。
また、一回目の揺れには耐えても、複数回の揺れには弱いと言われています。
<伝統工法の土壁の家>
揺れを吸収する制震
<在来工法の家>
揺れに耐える耐震