第一期修復工事 完成!
昨年11月に着工した築86年の家の第一期修復工事が今年7月に終了しました。
横須賀の高台にある家です。
昭和七年に海軍の軍人さんが建てた家のようです。当時の海軍の軍人さんは、海を一望できる見晴らしのよい高台に家を建てるのを、好まれたようです。今はまわりに家が建ち、見えづらくなっていますが、当時この家から海に船が行きかうのを、軍人さんが眺めている様子が目にうかびます。
お施主さんからお問い合わせを受けたのは昨年8月。
昭和七年に家を建てた時のように修復して欲しいとのご依頼でした。
古い建具が気に入り、この家を購入され、某工務店に工事を依頼し、工事を始めましたが、ご自分が考えていたものとは違う形に工事が進み、2月に工事を中断されたそうです。その後、古い日本家屋の修復を得意とする弊社に、お問い合わせを頂きました。
始めにお施主さんのお話を伺いました。家の状態を調べるために現場調査を行い、その後、幾度となく打ち合わせのお話を重ねました。その結果、何期かに分けて修復することになりました。
これは、その第一期修復工事の記録です。
昭和初期当時の建具
書斎
お施主さんが書斎にする4帖半、肘掛け窓の外観
壁は土壁。仕上げは漆喰と日本下見
書斎4帖半の内観 次期工事に畳を入れる予定
戸回し金具と雨戸
正面は肘掛け窓の杉の雨戸。
今回は工事しませんでしたが、右は縁側の雨戸。ゆくゆくは木の障子と木の雨戸に変える予定です。
近頃、めっきり見かけなくなりました。
昔懐かしい、戸回し金具。
雨戸を回して、方向を90度変えて、その奥にある戸袋に収納します。
厠(かわや)
壁は土壁、大津仕上げ
一部土壁が小舞ごと撤去されていたので、新たに小舞を掻き、その他は中塗り層から塗り替えました。
灯り窓
建築した86年前の建具が残っていたので、一本引きと開き戸をそのまま使用しました。
鴨居と方立は新しいものを取付け、灯り窓も86年前の形に再現しました。
外まわり
裏口 木戸の一本引き
北側外壁 日本下見という工法です。
完了検査
工事完成。お引渡し日、お施主様と内容の確認
雨漏り箇所
長い間の雨漏りで屋根をはじめ、梁や壁など、傷み方が激しく、大掛かりな修繕をした部分です。
修復した土壁
傷んだところを取り除き、新しい木で埋め木し、廻縁と鴨居を新しいものに交換
雨漏りしていた屋根
複雑に入り組み、雨漏りがしやすい構造です。
傷んだところを撤去し、谷などを雨漏りのしない形にして屋根を葺き替え、雨樋も取り付けました。
肘掛け窓のレール
お施主様のご希望で、この家で使われている古い真鍮製丸形レールを使う事になりましたが、残っていたものだけでは足りなくて、古材屋さんで探して購入しました。お施主様もあちこち探してくださいました。
建築材一般に言えることですが、昔の物には今の物より丈夫で品のある良い物が多々あります。
しっかりとして品もあり、お施主様こだわりのレールです。
電気
86年前とは生活様式が大きく変わり、電気系統も様変わりしました。現代に合った配線に整えました。
コンセント(テレビ、電話、パソコン)
釘
裏口に和釘を使用
和釘
職人が一本一本手打ちで造った、抜けにくく丈夫な昔ながらの日本の釘。
雨戸敷居
木造家屋に雨は大敵です。写真の右のほうにある刻みは、雨戸の敷居に水が溜まらないようにと小さな工夫。
今回手を付けなかった箇所。
今後の工事についても相談しながらの、第一期修復工事の検査でした。